7月22日、きのこのハイシーズンだということで、以前から「きのこがいい感じ」と噂に上っていた箕面の地で非公式の観察会を行いました。
一般には大学の試験期間直前なのですが、試験期間をものともしない1回生が2人参加してくれました。
もちろんハイシーズンですから、夢見るはテングタケ科やイグチ科、ベニタケ科など外生菌根菌たちの競演です。
最近雨がそこまで降っていなかったのでちょっと不安でしたが、長い距離を歩き続けて種数を稼ぐことができました。
阪急電鉄箕面駅に集合したのち、まずは箕面大滝に向かって歩き始めます。
最初に見つかったのはクロチチダマシでした (1)。
1回生たちにひだを傷つけてもらい、乳液の分泌を観察してもらいます。
この他にも道沿いの斜面にオニイグチモドキっぽいきのこ (2) を見つけたり、キアシグロタケの仲間 (3) やチャウロコタケ、ハカワラタケなどの硬質菌を観察したりしました。
このキアシグロタケの仲間は双葉みたいになっていますね。
こうしたきのこを眺めながらのゆっくりした足取りで歩き、お昼前に滝道の終着点・箕面大滝に着きました (4)。
ここで少し早目のお昼ごはんタイムをとります。
腹ごしらえを済ませると滝を離れ、山道に入りました。
上り道はスギの中に広葉樹がぱらぱらと混じる林で、あまりきのこは多くありませんでしたが、それでもコガネキクバナイグチ (5) やクラガタノボリリュウ (6) など、ちらほらときのこの姿が目につきます。
コガネキクバナイグチは以前まで「キクバナイグチ (広義)」と一括りにされていた種の1つで、最近になって分類・記載された種です。
傘表面の割れ目から覗く肉が黄色く見えることからこの和名がついたようです。
あとは傘表面のひび割れの目が細かいことも特徴でしょうか。
やがて尾根道に出るとコナラなど外生菌根性の広葉樹が散見されるようになり、菌根菌の数がいきなり増えてきます。
コテングタケモドキ (7)、ミヤマベニイグチ (8)(9)、ウスムラサキハツと、夏の林床を彩る3つの科の菌根菌が幅をきかせています。
ミヤマベニイグチは名前に「ベニイグチ」とついていますが、実際にはキクバナイグチ属のきのこです。
根元に白い菌糸を纏っているのもこのきのこの特徴の1つのようです。
それにしても、この子実体はミヤマベニイグチにしてはやや大きめですね。
その後の下り道には、ヘビキノコモドキ (10) やアメリカウラベニイロガワリの仲間 (11)、チチタケ (12) などが続きます。
いよいよ登場する種数も増え、テンションも上がってきました。
しかし、この時点で時刻はすでに15時に近づいていたため、近くの施設で一旦休息を取ったあと少し場所を移して最後のきのこ探しに挑みました。
すると、目的の道に入ってすぐにこの日最大の大物が目に飛び込んできました。
平地の猛毒菌・ニオイドクツルタケです (13)。
純白なドクツルタケと比べ、傘表面がやや黄色みを帯びているのが分かります。
その名の示す塩素のような「匂い」を嗅ぎ取ろうともしたのですが、この子実体ではあまり感じられませんでした。
その他にもクロタマゴテングタケ (14) やタマゴテングタケモドキ (15) などが見つかり、テングタケラッシュが続きました。
タマゴテングタケモドキはテングタケ属の中でも珍しく、ひだが赤みを帯びる種です。
さらに奥へ進んだところでは、ヒロハウスズミチチタケ (16)(17) やウコンハツ (18) を観察することもできました。
ヒロハウスズミチチタケはものすごく疎で波打つようなひだが特徴的なチチタケの仲間です。
個人的には初見だったので嬉しかったです。
この辺でそろそろ時間がだいぶ経っていたので引き返し、滝道に戻って駅を目指します。
その途中、ベニタケ属と思しききのこが無残にも金網の網目に引っかけられているのを見咎めて手に取ってみると、意外とお目にかかれない種であるフタイロベニタケだったという珍事にも遭遇しました。
そんなことがありつつ無事箕面駅に到着し、参加者全員とくに問題なく解散することができました。
今回は1回生たちが自らの試験勉強を犠牲にしてきのこ探しに参加してくれましたが、それに見合うだけの夏のきのこをそれなりに観察することができたと思います。
ただ、徒歩での移動距離をそれなりに長くしてしまったので、その点に関しては参加者のみなさまに申し訳なく思いました。
箕面、機会があったらまためぼしいきのこスポットをチェックしてみたいですね。
(文/h.a. 写真/m.h., t.f., h.a.)